ページ

2011年12月1日木曜日

雨の不動尊より

高幡不動尊はアジサイの名所で、見ごろを迎える初夏にはアジサイ目当ての観光客で毎年にぎわう。

同時にこの季節になると紅葉の名所ともなり、イロハモミジがグラデーションをおりなすように様々な赤みを演出して目を見張る光景がつくられる。

今日のような雨の日にアジサイが群生するそんな不動尊の山を登ると、枯れ落ちたイロハモミジの葉がそれより大分大きいアジサイの緑色の葉の上に、雨粒によってぴったとはり付いたまま地面に落ちきらないでとどまっている姿が見られた。

その赤と緑の重なりも、10センチ、20センチの間を隔てて山のいたるところで繰り広げられると、遠目から見ても晴れの日とは一味違ってカラフルだから面白い。

それにしても、水分が失われて枯れた葉が、雨によって再び水気を帯びたからといって生き返るわけではないのに、一面に渡って動植物が水をまとい、一気に冷え込んだ空気を吸っては吐き吸っては吐きしていると思うと、どこか息吹を感じるものがある。

境内にある池のほうでは、鯉が暖を取るように池の片隅に集まっていた。しかしその中から外れて放縦に泳ぎ回る他の鯉たちと上空から降る雨によってわずかに水面は揺れ、それを見た私はまるで子供のように、波の動きをいつまでも追いたくなった。

それもつかの間、ふと頭上を見上げると、水面の動きくらいわずかな分だけ木の葉も揺れていた。気温は低いが今日はあまり風がない。

こんな日でも、本堂の前ではお香の香りが流れ、護摩修行のお経と太鼓がいつもと変わりなく響いていた。