北海道のしばれる外気から離れて東京に戻ると、その日は暖かく感じられたものの、数日で身体は東京の気候に慣れ寒いと感じるようになり、さらに数日もすると、本格的な冬の冷え込みがもたらすすきま風が身に染みてこたえるようになる。もうクリスマスだというのに、今年は随分と静かだ。
この季節、去年までだと近所の家々では競うように外壁にランプのクリスマス装飾を施し、夜になるとキラキラ輝かせていたが、今年は一軒もそれをやらない。示し合わせてやめたのか、偶然やめたのかは知らないが、今年の近所はとても地味だ。
だからか公園の葉がすっかり落ちて、ここの木がすべて落葉樹だったことに気づくと、もう木の葉で遮られるものがなく、広い敷地の向こうに建つ家の屋根に反射した光がこちらまで届いてくるようになったことがどうにも寂しい。ただ威勢がいいのは晴天続きでからからに乾いた落ち葉で、歩くたびに薄焼きせんべいを食べたときのような音をたてる。握りしめるとパラパラ崩れるだけで手を汚すことのないこれらの葉っぱは、幾層にも重なり数センチの厚みをつくって虫の隠れ家になっているようだ。
公園を渡って音のしない用水の穏やかな流れの方に行ってみるとバサバサ音がする。こちらとあちらから、水を叩く音と羽ばたく音だ。二羽のカラスが追いかけっこしながら水浴びしているらしい。寒さに打ち震える私は、カラスは水が冷たくないのか確認してみたかったけれども、何に怯えてか水を触ることもできぬまま、上流の方へと歩いてみる。すると随分水音が大きいところがある。そこの10センチほどの段差から流れ落ちる水が跳ね返って渦を巻いて下流へ向かうさまは、ちょっとした小宇宙だった。
ひと際寒く感じる外気に、人生で最も静かな年の瀬を感じる散歩となった。
2010年12月23日木曜日
朝香宮のグランドツアー
普段は美術館として使用されている東京都庭園美術館の建物が公開されるとのことで、学芸員さんのガイドを聞きながらみてみることにしました。
アール・デコで統一されているというこの旧邸宅は、どちらかというと妃殿下の方が熱心に取り組んで建てられたものとのことですが、実際に朝香宮家の家族が住んでいたのは短く、妃殿下は完成後半年で亡くなったそうです。アールデコがものすごく好きなのかこのお屋敷がものすごく好きなのか、とても熱心に装飾美術や朝香宮邸成り立ちのきっかけについていろいろ説明してくれました。そして一時間だったはずの説明が、結局一時間四〇分になりました。
一階は宮家のいわゆる仕事場で、国賓などのもてなしができるように設えられており、ラパンやラリックなどフランス人アーティストによってつくられてます。二階は暮らしの場となっていて、アールデコといっても若干和風です。私はこちらの和風のほうが好きでした。
アール・デコで統一されているというこの旧邸宅は、どちらかというと妃殿下の方が熱心に取り組んで建てられたものとのことですが、実際に朝香宮家の家族が住んでいたのは短く、妃殿下は完成後半年で亡くなったそうです。アールデコがものすごく好きなのかこのお屋敷がものすごく好きなのか、とても熱心に装飾美術や朝香宮邸成り立ちのきっかけについていろいろ説明してくれました。そして一時間だったはずの説明が、結局一時間四〇分になりました。
一階は宮家のいわゆる仕事場で、国賓などのもてなしができるように設えられており、ラパンやラリックなどフランス人アーティストによってつくられてます。二階は暮らしの場となっていて、アールデコといっても若干和風です。私はこちらの和風のほうが好きでした。
ルネ・ラリックによる玄関扉
非常に貴重な一品物
アール・デコ独特の幾何学模様の照明
ラリック作の照明
噴水
食堂の照明らしく、果物
2010年12月22日水曜日
上空の景色~羽田から千歳
午前、空気は乾燥して晴天。千歳空港行きの飛行機が離陸してシートベルト着用サインが消える頃になると、いつものように富士山が見えてくる。この日の富士山の光景は恐山のようで、手前に広がる薄い雲が宇曽利湖のようにきれいだった。もう見慣れたはずのこの光景が、天候や飛行経路によってその都度微妙に違うことが、庭園の四季を楽しむように面白く、いつも神秘的だ。
飛行機の高度がここまで上がってくると、地上のちょっとした変化が本当にとるに足りない出来事に感じられ、建設中の東京スカイツリーはマッチ棒が立つほどの存在感しかもたらさない。ただ、建設現場で働く人々の労働の汗を思うと、そんなふうに感じられることになにか罪悪感をもってしまい、どうも後味が悪い。
それが東北地方まで移動する頃には、私の精神はすっかり人間社会から隔絶されたようで、田沢湖、ついで現れる十和田湖を目にした瞬間に湧き起こる感動は、私の集中力のすべてを地形の変化へと向かわせるのだった。この後、飛行機が着陸するまでに見られる人工的なものに、私の心が動かされることはもうなかった。
飛行機の高度がここまで上がってくると、地上のちょっとした変化が本当にとるに足りない出来事に感じられ、建設中の東京スカイツリーはマッチ棒が立つほどの存在感しかもたらさない。ただ、建設現場で働く人々の労働の汗を思うと、そんなふうに感じられることになにか罪悪感をもってしまい、どうも後味が悪い。
それが東北地方まで移動する頃には、私の精神はすっかり人間社会から隔絶されたようで、田沢湖、ついで現れる十和田湖を目にした瞬間に湧き起こる感動は、私の集中力のすべてを地形の変化へと向かわせるのだった。この後、飛行機が着陸するまでに見られる人工的なものに、私の心が動かされることはもうなかった。
富士山
田沢湖だと思う。
十和田湖だと思う。
津軽半島と下北半島
こちらも
北海道上空
こちらも
2010年12月21日火曜日
グランドホテル大雪
旭岳温泉の一画にあるのがグランドホテル大雪。今回の二泊三日の北海道温泉巡りの旅の最後に立ち寄った温泉です。泉質はカルシウム・マグネシウム・ナトリウム・硫酸塩・塩化物泉でph6とのことなので、弱酸性です。
ここの内風呂はすぐ近くにある勇駒荘に比べると見劣りしがちですが、ものすごい量の源泉が滝のように掛け流されている打たせ湯は入浴に来る価値があります。43度のお湯が、天井近くから流れてきてそこに肩を置いていると、凝りがほぐれていくのがわかります。そしてそこから湯温が一度ずつ下がっていく湯船が二つ三つと続いている内風呂となってます。
湯気でよく見えませんが内風呂
右奥に打たせ湯があります。
露天も私は気に入りました。源泉が注がれる方から向こうを見ると、白樺の木が生えていて、そこに雪が積もるのがなかなか風流です。私の他には一人二人ほどしか入浴しておらず、露天はほぼ一人で独占できる贅沢を味わえました。
露天風呂
グランドホテル大雪の駐車場から望む姿見駅
勇駒荘とグランドホテル大雪をハシゴしたのですっかり湯疲れしてしまいました。東京に向かう帰りの飛行機内でもずっと湯疲れ状態でしたが、温泉効果で身体も軽くなり、楽しい二泊三日の温泉巡りとなりました。夫もすっかり肩や腰が軽くなり喜んでました。下見等いろいろやってくれた母にも感謝です。
2010年12月20日月曜日
冬の旭岳と勇駒荘
この日は旭川市内から旭岳に向かい、勇駒荘の温泉に入りました。
更に旭岳に近づくと、大雪旭岳湧水という誰でも持って行きたいだけ水を汲んでいける、豊富な湧水場があります。ここは東川町に属するのですが、東川ではすべてこうした地下水で生活水をまかなっているため、上水道がないそうです。すごいことだと思いました。
私も水を汲んでから旭岳の麓へと向かいました。麓では冬ならではの光景が見られます。スキーやスノボー客たちが、どんどん山から滑り降りてくるのです。どうして寒くないのかと思ってしまいますが、自分も十代の頃まではスキーをこうして楽しんでいたのを思い出し、随分月日が経って今では温泉目的で旭岳に来たことがおかしくなりました。
温泉に入る前に、せめて旭岳ロープウェーで姿見駅まで行ってみよう、そしてちょっとでも冬山を歩いてみようと思い、私たち以外ほぼ全員スキー・スノボー客というロープウェーに乗って、姿見駅を目指しました。スキー・スノボー客達は、スポーツをするだけあってとても活気があり、賑やかな車内でした。
姿見駅に着き、冬山がどんなものかと外に出てみると、出た途端に駅内に戻りたくなる寒さでした。どうしてこの中をこの人達は滑っていけるのかと思いながら、スキーやスノボーを担いでスタート地点まで歩く若者たちの後を追って雪山を歩いてみましたが、雪に埋まるは寒いわでやはり限界。若者たちが涼しい顔をして滑っていくのを後に姿見駅の反対側のコースにも行ってみると、こちらはもっと足が埋まり、そんなことでてこずってるうちに身体はどんどん冷えてきて、これが吹雪いていて道がわからけらば大変だろうと、雪山で遭難する現実を身にしみて実感しました。
姿見駅内の無料休憩所で暖をとっていると、20分に一本走るロープウェーが次から次へと人を乗せてきます。スキー・スノボーが多いのですが、中年と思しき方たちも足の裏にカイロを貼ってかんじきを履き、雪山に登って行きました。随分とタフです。
そんな雪山の光景を楽しんで(ほとんど休憩所にいただけ)、上りに比べてグッと人の少ない下りのロープウェーに乗り、麓へと下りました。そして最大の目的地である勇駒荘へと向かいました。
何かと評価の高い勇駒荘。今回は1500円で三段弁当に日帰り入浴つきプランというのにしました。その手続をしている最中も、フロントロビーの立派さに驚きました。ついで日帰り入浴者用のレストランでお弁当が出てきて(セルフサービス)、その豪華さとおいしさにまたまたびっくりしました。柔らかいお肉にアツアツの湯豆腐、お味噌汁も程よい塩加減で、デザートの牛乳プリンだと思うのですが、これがまた美味しいんです。これに温泉がついて1500円とはお得です。
宿泊者用に別の施設があるそうで、そちらは+1500円払うと入れるそうです。次は宿泊で来たいものだと旭岳登山を念頭に置きながら勇駒荘を去りました。とてもコストパフォーマンスの良いランチと温泉でした。
途中の車窓
忠別ダム
旭岳に向かう途中には忠別ダムがあり、広大な溜池に水が貯えられています。夏に来たときは車から下りてダムの眺めを楽しみましたが、冬は寒くて、車窓で我慢となりました。
私も水を汲んでから旭岳の麓へと向かいました。麓では冬ならではの光景が見られます。スキーやスノボー客たちが、どんどん山から滑り降りてくるのです。どうして寒くないのかと思ってしまいますが、自分も十代の頃まではスキーをこうして楽しんでいたのを思い出し、随分月日が経って今では温泉目的で旭岳に来たことがおかしくなりました。
温泉に入る前に、せめて旭岳ロープウェーで姿見駅まで行ってみよう、そしてちょっとでも冬山を歩いてみようと思い、私たち以外ほぼ全員スキー・スノボー客というロープウェーに乗って、姿見駅を目指しました。スキー・スノボー客達は、スポーツをするだけあってとても活気があり、賑やかな車内でした。
姿見駅からスタート地点へと歩く人たち
スタート地点からの眺め
姿見駅に着き、冬山がどんなものかと外に出てみると、出た途端に駅内に戻りたくなる寒さでした。どうしてこの中をこの人達は滑っていけるのかと思いながら、スキーやスノボーを担いでスタート地点まで歩く若者たちの後を追って雪山を歩いてみましたが、雪に埋まるは寒いわでやはり限界。若者たちが涼しい顔をして滑っていくのを後に姿見駅の反対側のコースにも行ってみると、こちらはもっと足が埋まり、そんなことでてこずってるうちに身体はどんどん冷えてきて、これが吹雪いていて道がわからけらば大変だろうと、雪山で遭難する現実を身にしみて実感しました。
姿見駅内の無料休憩所で暖をとっていると、20分に一本走るロープウェーが次から次へと人を乗せてきます。スキー・スノボーが多いのですが、中年と思しき方たちも足の裏にカイロを貼ってかんじきを履き、雪山に登って行きました。随分とタフです。
そんな雪山の光景を楽しんで(ほとんど休憩所にいただけ)、上りに比べてグッと人の少ない下りのロープウェーに乗り、麓へと下りました。そして最大の目的地である勇駒荘へと向かいました。
ロープウェーからの眺め
スキーで滑った跡が沢山です。
川が流れてます。
ロビー
フロントの前にある飲泉場
自由にもって帰れます。
三段弁当
三段のところを開くとこうです。
食後しばらくまったりして消化を待ち、温泉へ。この温泉がまたすごいんです。内風呂はものすごく天井が高くて開放感があり、日帰り入浴用には二種類の温泉が用意されています。手前にあるのが正苦味泉というお湯で、ぬるいお湯のため長湯するのに最適です。そこでじーっと身体があたたまるまで入ってから、種類の違う温泉が注がれているという露天風呂へと向かいました。こちらのお風呂は正苦味泉より熱めで、冷たい外気のなかではこれくらいがちょうどいいかと思いました。お風呂には湯の花がものすごい量舞っていて、これで温泉効果がないわけがないと思いながら、目の前の白銀の世界を眺めました。
宿泊者用に別の施設があるそうで、そちらは+1500円払うと入れるそうです。次は宿泊で来たいものだと旭岳登山を念頭に置きながら勇駒荘を去りました。とてもコストパフォーマンスの良いランチと温泉でした。
ほろしん温泉 ほたる館 平家の宿
岩盤浴があると聞いて、温泉と岩盤浴の両方を楽しみにやって来たほろしん温泉・ほたる館。随分辺鄙なところだと思いましたが、この辺りは元は炭鉱があったらしく、現在は記念館が建てられてます。
記念館がこうして道路を挟んで向こう側にあるのですが、
冬は休館のようです。
記念館は冬季休業のために入れず残念でしたが、温泉はちゃんと営業してました。入館の際に岩盤浴の予約もして、説明を受けてからお風呂へ向かいました。
最初に行った露天風呂には電気が流れる箇所があり、そこに身体をおくと、筋肉がピリピリするという楽しみ方もできます。そして何より、眼下に川が流れるのが最高です。私は誰もいないこの露天風呂から、ちょっと離れた川までなんとか雪玉を投げ入れようと試み、10回目くらいでようやく川まで届きました。雪を握って手も身体も冷たくなるとまた湯船につかることを楽しんだりもできる露天風呂です。湯船の脇には、他のお客さんがつくったらしい小さな雪だるまもありました。みなさんいろいろな楽しみ方をしているようです。
内風呂に入ると、黒っぽい色をした湯の花があちらこちら舞っていて、それらを身体にくっつけてみるとぬるっとした肌触りで、温泉成分が浸透していくのがわかります。なんと贅沢なお湯。
そんなことをしているうちに岩盤浴の予約時間が来たので、浴衣に着替えて岩盤ルームへと向かいました。本当なら蒸気が出るはずなのが、この日は設備が故障中で蒸気なしとのこと。店員さんが用意してくださった水を一杯飲んで岩盤浴を開始します。50分出られませんとの説明がありましたが、開始後30分もすると汗がダラダラ流れて、う~んこれはキツイと感じ始め、結局40分ほどで外に出てしまいました。それでも効果は十分と思えるもので、とても身体が軽くなりました。温泉とはまた一味ちがう爽快感です。
温泉と岩盤浴の両者を楽しめたほろしん温泉・ほてる館でした。
ほろしん温泉のある沼田町から旭川に向かう途中の車窓
途中にある秩父別の冬の百禄園
すべてオンコの木ですが雪がかぶっていてよくわからないかも。
園内は冬は観光化しないようで、除雪もされてませんでした。
でも、こうして猫かキツネのような足跡があり、冬の北海道らしい光景です。
雪吊りなのかそうではないのか、微妙な百緑園でした。
ここからは新築されたJR旭川駅です。
木の街旭川を大々的にイメージしてつくられた建物内は、
こうしてほとんどが木目で暖かい雰囲気です。
こちらはまだ取り壊されていない旧駅舎。
この奥に新駅舎が建ってます。
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