北海道のしばれる外気から離れて東京に戻ると、その日は暖かく感じられたものの、数日で身体は東京の気候に慣れ寒いと感じるようになり、さらに数日もすると、本格的な冬の冷え込みがもたらすすきま風が身に染みてこたえるようになる。もうクリスマスだというのに、今年は随分と静かだ。
この季節、去年までだと近所の家々では競うように外壁にランプのクリスマス装飾を施し、夜になるとキラキラ輝かせていたが、今年は一軒もそれをやらない。示し合わせてやめたのか、偶然やめたのかは知らないが、今年の近所はとても地味だ。
だからか公園の葉がすっかり落ちて、ここの木がすべて落葉樹だったことに気づくと、もう木の葉で遮られるものがなく、広い敷地の向こうに建つ家の屋根に反射した光がこちらまで届いてくるようになったことがどうにも寂しい。ただ威勢がいいのは晴天続きでからからに乾いた落ち葉で、歩くたびに薄焼きせんべいを食べたときのような音をたてる。握りしめるとパラパラ崩れるだけで手を汚すことのないこれらの葉っぱは、幾層にも重なり数センチの厚みをつくって虫の隠れ家になっているようだ。
公園を渡って音のしない用水の穏やかな流れの方に行ってみるとバサバサ音がする。こちらとあちらから、水を叩く音と羽ばたく音だ。二羽のカラスが追いかけっこしながら水浴びしているらしい。寒さに打ち震える私は、カラスは水が冷たくないのか確認してみたかったけれども、何に怯えてか水を触ることもできぬまま、上流の方へと歩いてみる。すると随分水音が大きいところがある。そこの10センチほどの段差から流れ落ちる水が跳ね返って渦を巻いて下流へ向かうさまは、ちょっとした小宇宙だった。
ひと際寒く感じる外気に、人生で最も静かな年の瀬を感じる散歩となった。