一見フキのような様相を見せるルバーブを、何十本もきれいに水洗いしてジャムにする作業に取りかかった。
2㌔ほどのルバーブに対して用意したのは、白ワイン750ミリリットル一本と、砂糖1キロ。
作業はいたって簡単なので、時間はかかっても楽勝であると思っていたのも束の間、ルバーブを2センチ幅に切っている最中に早速災難が私の手にふりかかってきた。包丁を押す右手の人差指の付け根のところの皮膚が、何度も何度も強い力で包丁とぶつかるために、水ぶくれになってしまったのだ。
参った参ったと思いながらも四苦八苦してなんとかルバーブは切り終えたものの、水ぶくれは痛い。包丁を扱っているときは必死なのでその痛みもさしたるものとは感じなかったのが、ルバーブに砂糖をかけてワインで浸し、あとは一晩おいて明日煮込もうと一息ついた頃にジンジン痛みを強く感じ始めた。
外では雷が轟き、大粒の雨がベランダを叩く音が聞こえてくる。そして葦簾越しに入ってくる雷光は、傷口を刺すように鋭い。
これで傷口が化膿でもしたらルバーブに生涯に渡っていい思い出をもつことはできないだろう、そして明日ジャムが仕上がってもそれではあまりに寂しい、だから傷の手当をきちんとしよう、と私は水ぶくれを潰して水を出し、ヨレた皮膚を切り取り、よく水で洗って紫雲膏を塗った後に絆創膏で保護し、その日の作業を終えた。
雷は翌日も轟いて、時折雨が降ってきた。空のおどろおどろしさとは対照的に、外気は涼しく過ごしやすくて、ルバーブを煮込むにはうってつけだった。
鍋を火にかけて沸騰するのを待つと、その後アクがどんどん出てくる。そのアクをこまめに取りながら30分弱火に続け、ルバーブの原型が崩れて柔らかい筋状になるのをひたすらかき混ぜながら待った。
昨日は私の手を痛めたルバーブが、火にかけるとこんなにも素直にジャムになってくれるのかと狐につままれたような感覚におそわれる30分であった。
ルバーブの酸味のある甘い香りは、稲妻が傷を刺すのとは違って鼻まで優しく届いた。これがジャム作りの醍醐味である。