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2011年6月8日水曜日

6月の自然教育園

松岡美術館で見たミレイの『聖テレジアの少女時代』という絵画に出てくる少女について考えていた。天真爛漫な弟に比べて、まだ同じ子供なのに、緊張したような不安を抱えたような表情をして歩く少女だった。子供が厳しい現実に気づいたときの顔はこういうものなのだろうと思うとこちらの胸まで痛くなってくる。そんなことを思いながらが、すぐそばの自然教育園に入った。

雨上がりだったけれども中学生の団体が数名ずつ方方に散らばって、鳥の鳴き声よりも目立つ話し声を響かせながら自由気侭に園内を歩いていた。とても元気だ。ただ、男子はなぜか礼儀正しく、私が通り過ぎるときに「こんにちは」と挨拶をしていく。女子はそんなことをする気配がないのに、なぜ男子は完璧なまでに挨拶をしていくのか、謎は深まったが理由は最後まで分からなかった。

彼らと同じくらい園内を賑わせていたのは、至る所に咲いているドクダミの花である。ヤマアジサイより下方に咲くドクダミは、小さく清楚に花を咲かせ回廊をつくっていた。アジサイより更に高いところにはドクダミと同じく白色を出すヤマボウシが空に向かっていた。

その後池の近くでは絶滅危惧種であるノハナショウブとアサザを見かけた。ここで多くの中学生とすれ違ったが、彼らはノハナショウブの濃い紫にもアサザの鮮やかな黄色にも関心を示さず、クサガメの方に興味を持っていた。色でいえばよほど目立っている花たちだが、水面上に顔をニョキッと出して何かをアピールするような仕草をするカメの方が彼らの目にはよく入るらしい。

頭上では新緑が無数の重なりを見せ、雲から覗く太陽の光を器用に遮っていた。かと思うと、突然光が降り注ぐエリアがあって、眩しさに気を取られるのだった。

道路を走る車の音が隣をずっと追ってくるのが気になる散策だったけれども、ともあれ束の間の自然を楽しむことができる自然教育園である。