夏場の電力不足に備えて、夫は少し前に、南側を向く窓の数だけヨシズを注文した。そしてよその家も同じことを考え注文しているようで品切れが続き到着が遅れていたのが、ようやく届いた。
届いた翌日になると、夫は自分の手柄を自慢するかのようにヨシズをまず自分の部屋の窓に立てかけ、まだヨシズが必要なほどの暑さではないにもかかわらず、どんなものかと無理くり涼しさを体感しようとしているのだった。私はヨシズというものが何かよく知らず、そんなもの立てかけたら視界がなくなるだろうと腹立たしかったが、夫の部屋に行ってみると、中からは外がわりとよく見えるから面白い。これは確かにつかえる。
両国で狩野一信の描いた五百羅漢を見てきたところだけれども、羅漢たちはお風呂に入ったり、六道をみていたり、神通力をつかったりとやることに事欠くことなく人間世界の周辺にいながら、人間たちを見守っているようだった。
我が家にやってきたヨシズも、この夏私たちを日々見守ってくれることになるだろう。