利尻行きフェリーには団体ツアーが何組か乗り込み、船内はたいそうな賑わいで、私はフェリーの最後尾にある吹きさらしのデッキの椅子に座った。夜から朝にかけての外気の冷たさにより冷やされた椅子が暖まってきた頃ようやく船は出航するのだけれども、ノシャップ岬を過ぎて周囲になにも見えなくなり、ほどよく波に揺られはじめると、私はウトウトして寝てしまった。
恐らく30分くらい寝た後目覚めると、雨が強くなったきたなあと海を打つ雨の強さを見て思い、見えなくなった北海道本島を向こうに後ろを振り返れば、いつの間にか利尻島がそこにあった。
こうしてフェリーに乗り込む
稚内湾にある防波堤
フェリーから望む稚内公園
右端はノシャップ岬
フェリーは利尻に近づいた
利尻富士の下の方だけ見える
だいぶ利尻に近づいた
雲がかかり利尻山は下の方しか見えなかった。船を下りてホテルの送迎の人と相談すると、雨はいずれ止むだろうが観光バスの方がいいとのアドバイスを受け、私は荷物だけ預けてそのまま観光バスに乗ることにした。利尻も礼文も船の到着に合わせて観光バスを出発させているという気のききようがありがたい。
雨の中、45座席ほどのバスには乗客22名が乗った。最初に寄った姫沼は晴れていれば逆さの利尻富士が映るはずが、今日は雲がかかってはっきり映らず、ガイドさんが映ってますよ映ってますよと励ましてくれても私にはまったく見えなかった。しかし、姫沼の周囲を一周できる遊歩道は開拓の大変さを教えてくれる自然のなかで、こんなにササや木が生えるのを開拓するのかと思うと気が遠くなった。
姫沼
遊歩道
ここからオタトマリ沼
蝶が
次に寄ったオタトマリ沼もとても美しい沼で、ここからの利尻山もやはり上の方は雲がかかって全貌は見られなかった。しかし、雨で足下がぬかるんでいるのでここは遊歩道はやめましょうとガイドさんが言っていた散歩道を少し入ってみると、見たことのない蝶が舞い、こんなエゾマツに囲まれたなかで小さな花花が密かに可憐に咲いていることに妙に感動した。晴れた日に訪れることができれば、是非とも一周したい。
その後行った仙法志御先公園ではアザラシが飼育されていて、愛くるしい顔と水の中では自由自在のしなやかな動きを見せてくれた。このあたりは利尻山の噴火で流れ出た火山がかたまったものがそのまま岩になり、険しい姿を見せているが、そのなかでこのアザラシの愛くるしさは、利尻島の人のユーモアだろうか。
仙法志御先公園の険しい岩
アザラシたち
その後利尻町立博物館で利尻の歴史に触れツアーは終わった。そして最後は鹿児島の桜島ツアーでも宮崎の青島ツアーでもあったように、ここでもガイドさんは地元の歌を披露してくれた。そしてどのガイドさんもなぜか歌がうまいのと同じく、このガイドさんもうまかった。
バスが三時間半ほどかけて利尻島を一周するも、一度も晴れ渡ったことはなく、利尻富士を頂上まで見ることはできなかったが、それでも満足のいく利尻一周のツアーだった。