ニコラウス・アーノンクールという指揮者がウィーンの伝統から解放された解釈で指揮をしているらしいとの情報を夫から聞き、NHKプレミアムシアターで放送されていた2010年のNHK音楽祭で指揮するアーノンクールを聴いてみることにした。曲目はバッハ/ミサ曲ロ短調。
照明が落とされ暗くなると、しばらくの沈黙の後にどこからともなく拍手がなり始める。アーノンクールがアリス夫人らウィーン交響楽団出身者と共に立ち上げたウィーン・コンツェントゥス・ムジクスの登場だ。その後合唱団が登場し、やや強まる拍手と共にソプラノからバスまでそれぞれのパートを受け持つソロの歌手たちが入場する。そしてややあってアーノンクールが姿を現すと、会場に向かってお辞儀をした途端に一層強まる拍手で観客に迎えられた。
他のオーケストラ・指揮者による同曲の演奏を聴いたことがないので比較することはできないが、地の底から響いてくる音色を大事に大事に観客のもとへと届けてくれる演奏がとても気に入った。古楽器によるバッハの世界を十分堪能させてくれる演奏会だったと思う。
一緒に聴いていた猫も穏やかに安眠している様子だった。
アーノンクールはこの演奏時すでに80歳。今後の活躍に目が離せなくなりそうだ。