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2011年9月2日金曜日

礼文より

利尻では風の音に睡眠を邪魔されたものだが、礼文でその役割を果たしたのはウミネコだった。寝る前に、それにしてもよく鳴くものだと気になっていたウミネコによって、早朝4時半頃叩き起こされるように私は目覚めた。部屋のカーテンを開けるとほんのり辺りは明るく、けれども海の向こうに見えるはずの利尻山は霧がかかって望めなかった。

それでも二度寝して6時に起きたときには外気はなま暖かく、その後一時間半ほどして外に出ると秋の日差しとはいえ照りつけると身体は暑くなり、日焼けもみるみる進むように感じる。しかし、昨日は雨で思うように観光できなかったとの悔いが残ったので、今度は心に余裕をもって観光しようと再度昨日乗ったのと同コースの観光バスに乗ることにした。

昨日はバス乗車時点ですでに土砂降りでどうなることかと思ったが、一つ目の観光地であるスカイ岬に向かう時点で今日は晴天。岬の入り江が晴れていると水の色がもっとブルーに見えると昨日のガイドさんが言っていたので、今日はその澄みきったブルーを期待した。
スカイ岬に向かう途中にある久種湖

もうちょっと行くとこうして美しい丘の景色

曇り空の下でのスカイ岬

岬の向こうの海

晴天だと水がもっと青くなるという

海は期待通りの色を見せてくれた。底まで見える透明度に、太陽の光が雲に遮られることなく差し込むために出てくる青色。周囲の断崖絶壁の険しい肌合いと色合いが海のブルーとよく合っている。この不思議なほど美しく見える自然の組み合わせに時間いっぱいまで目を張り付けた後には、今度は次の岬であるスコトン岬にバスは向かう。
晴れているとスカイ岬も澄み渡る

こんなふうに

スコトン岬の遙か向こうにはサハリンが位置し、その手前には岬から800メートルほど離れたところにトド島と名付けられた島がある。この島には冬になるとトドがやってきて上陸しては休んでいるらしい。トド島は無人島だけれども漁が盛んな時期だけ数名の人がこの島に住み込みながら漁をするという。
曇り空のスコトン岬
向こうにあるのがトド島

雨でも曇りでもアザラシはやって来る。
真ん中あたりに点々と顔を出していたり
寝そべっていたりする。

ちょっと見にくいが顔を出している

いっぱい寝転がっている


その暮らしを聞いていると、電気も水道もないところでの暮らしが昭和、いや大正、いやそのもっと前の暮らしで、さすがに漁師は都市生活など求めないのだと漁師魂のすごみを見た思いがした。

ここスコトン岬付近にはアザラシが、私が行ったときで100頭ほど戯れていた。これはすべて野生で、このアザラシたちに島の漁師たちは食い扶持を脅かされすっかり天敵・害獣視しているものの、他方で観光資源として利用しているのが事実である。実際、お土産屋さんにはアザラシのぬいぐるみやTシャツ、タオルがあり、アザラシさまさまなのだった。


晴れのもとでのスコトン岬のアザラシ

いっぱいいる

向こうがトド島

スコトン岬を終えると、今度は最後の目的地である桃岩・猫岩展望台へとバスは向かう。


確かに桃のようなかたちをした巨岩が丘続きにあり、そこからそのまま海に目線を落としていくと、猫のようなかたちをした巨岩が海の中にちょこんとある。因みにこのあたりはトレッキングコースになっていて、歩いている人が遠めに見える。

桃岩

猫岩

岩のかたちも面白いが、この辺りの眺めはとてもよかった。島の西側には道路が完全に通っているわけではないので、トレッキングでもしない限りスカイ岬とこの桃岩・猫岩展望台からしか観光客は西側の海岸線を望むことができないという。東側に比べてより人口が少なく、最近では桃岩などの観光名所での落石が多いために、人の出入りも厳しく制限されているとのことで、どこかひっそり感が漂っている。

それでも、トレッキングコースでは今はトリカブトの花が群生して咲き誇っているのが見られるようだし、桃岩・猫岩展望台の階段脇にも多くの花が咲いていた。

ちなみに島には信号機が一つあるだけで、それも道路の安全横断のために設けたのではなく、子供たちがいずれ島を出たときのために、他の街でもやっていけるようにとの社会勉強目的でつくられたものだという。

ドコモショップもauショップもマックもない人口3000人ほどのこの島の暮らしは、これからの子供にとって島では必要ないのに敢えて学ばなければならないことが多いようだ。