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2011年1月14日金曜日

駒場公園散策

京王井の頭線駒場東大前駅で降りると、駒場農学校だったところが様々なかたちに変貌して利用されている姿を目にすることができる。

東大教養学部

改札を出てすぐのところには東大教養学部の校舎があり、業者の車やVIPでも乗せているのかと思うような高級車や徒歩の学生たちが門を行き来する。

そこから駒場野公園までは、踏切を渡って坂道をわずかだけれども上ることになる。公園内は野草園があったりとアットホームで、職人がつくった美の公園というより市民の手作り感がにじみ出る親しみやすい公園だ。
駒場野公園

わりと野性味がある

私の目には立派なアカマツが目立ったが、アカマツの植林区域からやや歩いたところに東京教育大学農学部の日本初という試験田が突然現れ、こんな住宅地で場違いだとの印象を思わず持ってしまったが、昔はあたり一体田畑緑だったのを思うと、ずいぶん気合いを入れてこの水田を残している目黒区や市民の意気込みを感じる。

奥まで水田が続く

駒場野公園から再び踏切を渡って駒場公園までは数分。加賀百万石の前田家本邸があったところだ。敷地内には旧前田家駒場本邸の洋館と和館は無料で見学できる。都内の文化財指定の洋館といえば旧岩崎邸が群を抜いて立派だが、私が見たなかでは旧岩崎邸、旧古河邸ときて、それよりもっと簡素にしたつくりに思うが、立派は立派だと思う。建築はチューダー様式とのことだ(何がチューダーなのかは私にはよくわからなかった)。
チューダー様式の洋館


以下室内





書斎

寝室

古時計か?

洋館のなかにあった和室

洋館の前には芝生広場と立派な松が植えられ、昼時にこの前を通るとゴザを敷いてくつろいでいる人もいる。市民がこうしてくつろげるとはありがたい。そしてその奥には書院造りの和館がある。ここの日本庭園はとても気に入った。職員らしき人がふすまを開けてくれたのだが、水の流れ落ちる音が聞こえる。左側に滝があるのだ。そこから目の前の雪吊りの松より右側まで水が流れ続けている。なかなか風流だ。もっと暖かくなったらゆっくりくつろぎにまた来たい。

和館の門

私がとても気に入った鉢植え

室内

雪吊りのある庭

奥に滝がある

雪吊り道具一式




和館の隣は日本近代文学館で、明治の文学資料が展示されていた。猫好きの私は夏目漱石の「我が輩は猫である」の当時の書籍の表紙に猫がいるのが嬉しかった。
日本近代文学館

日本民藝館本館

西館

いったん駒場公園を出て一般道を駅と反対方向に数分歩くと日本民藝館がある。ここは期待以上に良いところだった。まず中層階や普通の一戸建ての住宅の並びに倉敷美観地区を思い起こさせるようなレトロな和の建物が現れる。まさかこれが民家ではあるまいと思うと、やはり日本民藝館だった。本館の向かいには今回は閉まっていた西館があり、同じくレトロな和の雰囲気を醸し出している。そして入館してみるとさらに驚く。二階建てのこの建物は、玄関が吹き抜けになっていてとても広く感じるのだが、その木のつくりに圧倒されて、鰊番屋にでも入ったかと思うような別世界だ。館内はあそこにもここにも染物や陶器などの民芸品が展示されていて、インテリアの役割も果たしてくれる。

二階の展示から見てくださいとのことで幅広の階段を二階まで上って行くと、どの部屋から見ていいのかわからないほどいくつもの部屋があって、その一つに適当に入ってみると仏像がたくさん並んでいて目を奪われた。これはいい。

それは朝鮮時代(1392~1910)に朝鮮半島でつくられたものだ。ここにある木や石の神仏像は日本のお寺で見るものとはひと味違う印象で、素朴で親しみやすく和やかな全身像はいつまで見ていても飽きない。そしてそれらを横から見てみると、どれも猫背でまるで猫なのだ。猫好きの私にとってとてもいい発見だった。

次に見た富本憲吉、黒田辰秋、バーナード・リーチの陶芸はどれも秀逸だった。先日三井記念館で室町三井家の収集品を見たが、同じ陶器でもあちらが本格茶道派なのに対して、ここで陳列されているものはやはりより手近に感じられる品々だ。だからこういうものが家にあればいいのにと本当に思いながら見て楽しむことができる。これが民藝の真髄かと思わされた。
 
この日の特別展は『日本の古人形』。三春、鴻巣、堤など各地の人形があり、当時の風俗がわかる展示だったと思う。
 
思いのほか日本民藝館にハマってしまった駒場公園散策だった。