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2011年1月22日土曜日

熊野古道・発心門王子~本宮、川湯温泉


この日は湯峰から発心門王子まで路線バスで行き、本宮大社までの約7キロの熊野古道を歩いた。宿の女将さんが、このルートは初心者でも大丈夫だから、と言ってすすめてくれたので、前の日の大日越の疲れを押して歩いても大丈夫だろうと選んだ。

8時台のバスを逃すと次が11時台なので、8時3分湯峰発のバスに乗って発心門王子へ向かう。下車するときに運転手さんが簡単に道の説明をしてくれた。熊野の交通機関の人は、バスの本数が少ないことを十分承知してか、観光客には概して親切だ。
バスからの車窓

発心門王子

8時40分。ここ数日の雪の残るなか発心門王子で無事完歩できることを祈ってから熊野古道へと入っていく。すると小さな集落が見えてきて段々畑が出てくる。そして、「ようこそ」のお出迎えをしてくれるのだが、本物の人間かと思って驚いた。

段々畑

ちょっとびっくり

熊野古道らしい

そのあたりから森の中へと入ることになるが、大日越と同じく杉の木が林立している。そしてそのなかにはけっこう竹も混じっている。そして廃屋が点在するところを過ぎると、水呑王子に着く。ここにも学校の廃墟跡のような大きな建物とプールがある。
廃屋かな 

水呑王子

学校のような建物。近くにはプールもあったが
いずれも今は使われてない様子。


その後またまた杉の木の道へ。伐採された木々が無数に横倒しになっていて、幹の上に石が積まれているのは、古道を歩く人の祈りのあとだろう。私も一つ置いてみた。
無数の横倒しの木

こういうところがたくさんある。

こういうお地蔵さんもあった。

道の両脇にはずっと同じ草が生えているのだが、勢いの良い緑のなかに枯れているものがある。そして枯れているものをいくつか観察してみると、枯れているのは根本から枯れているように見える。どこからこの差が出てくるのか不思議だった。

その後も多くの人が通るためにとても堅い土の道となっている熊野古道を歩き続けるのだが、薪を積んでいる上にかかっているトタン屋根に石を置いて飛ばないようにしているのがとても気取らない生活感に見えて新鮮だった。そしてこのあたりから視界が開ける。
こういう光景も熊野古道

遠くの山が見えるようになる。

こんなふうに


遠くを見渡すと、手前の山には雪がないのに、奥の山は白く雪が積もっているので不思議だった。そんなことを考えているうちに、茶畑のたくさんある集落に出る。そして、熊野で初めてとなる猫と出会った。やはり猫と会えると猫好きの私は嬉しい。が、すぐ逃げられた。

熊野古道で出会った唯一の猫

三毛猫だった。
このあたりの山は東西に18キロ連なる果無山脈で、稜線は奈良県境になっているという。高野山と熊野本宮大社を結ぶ参詣道が今も残っているそうだ。

果無山脈
その後まもなく伏拝王子へ到達。本宮までの半分くらいの道のりを歩いたことになるここには、とても大きな休憩所があって助かる。休憩所からの山並みも絶景だ。ここで30分ほど休んで再び熊野古道へ。
伏拝王子

伏拝王子休憩所はこうして広い

休憩所からの眺め

またまた熊野古道へ

杉と竹の森を歩くのは楽しい。誰も居ないところを一人で歩くのはとてもわくわくする。大日越の時もこの日も、ここまででは合わせて4人としか会っていない(いずれも男性だった、その後1集団とすれ違った)。

和歌山は豪雨地帯と聞いたが、私が熊野古道を歩いた日は二日とも晴天でとても歩きやすかった。ただ雨だと下り道は滑りやすくて危ないかもしれない。雨でなくてもこのあたりまで来るともう足はフラフラ。左下の道のりで妙にひらひらした葉を見つけたが、なんだか私を応援してくれているようにすら見えてくるほどの朦朧ぶりだった。

本当に晴天

九鬼ヶ口関所

まだ上りが続く

やっぱり晴天

岩がこうして重なっているところが出てくる

そして杉

本当にクタクタになってきたところで、見晴台なるところへの矢印が。行ってみると、本宮の鳥居がみえて、とてつもない景色だった。遠回りでも来てよかった。本当に良かった。鳥居がここから見えたとき、昔の人が本宮にたどり着いたときの喜びを共有した気がした。
見晴台はこうして広場になってる

本宮の大鳥居が見える

同じ角度から

なかなかすごい山並み


ギザギザの山並み

鳥居が見えたので、本宮まではあともう少し。時々カラスが鳴くだけで、虫も他の鳥の鳴き声も聞こえない熊野古道は、10時を過ぎた頃には身体もすっかり熱くなる。

10時頃の熊野古道
ちょっと横を見ると木々が険しい崖に生えているだけで、他は草が辺り一面生い茂っているのだが、昔はここをどう本宮まで歩いたのか私には不可能にしか思えないのに、こうして道ができたことがすごいと思った。昨日空港から本宮までのバスのなかでここの道のことではなかったはずだが、人柱の話があったことを思い出す道だった。

見晴らし台からは石段の道でけっこう歩きづらい。そこを終えると集落にでるのだが、犬がそろって昼寝していた。
下りはこういう石畳の道になる

犬の昼寝

本宮大社まであと一歩のところに祓所王子がある。隣にある木はとても太くて石のように堅かった。
祓所王子

隣の木


そして本宮の鳥居をくぐって境内に入り、本殿へ。熊野古道のこの日の道のりを無事終えられたことを感謝して参拝した。

 この日の宿泊地は川湯温泉の民宿立岩。女将さんが本宮まで迎えに来てくださり、13時には宿に着いた。随分早かったが快く迎えてくださり感謝。

早速名物の仙人風呂へと女将さんに渡された女性用の入浴着を持って出かける。300メートルほど歩いたところに、確かに大露天風呂があり、数人入浴中で、足湯だけのスーツ姿の人もいる。私も寒空のなか入浴着に着替えて仙人風呂に入る。長湯できるくらいのぬる湯だと思うが、ここは川の底から源泉が湧き出ているというだけあって、プクプク泡が出ている源泉付近に行くとお湯が熱い。隣に流れている大塔川の水を引き入れて適温にしているのだが、この川の水がとてもきれいで感動する。夏は川遊びが楽しめるだろう。硫黄の臭いのほのかにするなか、山と川のある露天とは豪華だ。ただ、私には広すぎて落ち着かない。ものすごく広いのだが、みんなハジっこの方にちょこんと座っているので、とてもだだっ広く感じ、やはり落ち着かない。ほどよくぬくまったところで宿のお湯をいただいたが、こちらの方が狭くて落ち着いて入れた。

仙人風呂への橋

とてもきれいな大塔川

本当にきれい

仙人風呂に行く途中では猿が出没した。5匹くらいいたと思う。最初はあのすばしっこい動きは猫かと思ったのだが、猿なのだ。仙人風呂から帰るときもいたので、半野良の猿なのかもしれない。


屋根の上に猿

民宿立岩の夕食は大満足だった。刺身も川魚の天ぷらもデザートのイチゴもとても新鮮でおいしい。部屋も入ったときから暖かくてこたつがあったのも助かった。コストパフォーマンス最高の宿だった。中性の温泉は透明でサラサラなお湯で、風呂上がりがとてもスッキリする。宿泊者は私だけだったようで、入りたいときにいつでも入れて結局3回入らせていただいた。

因みに川湯温泉には道を少し上がったところに十二薬師如来が祀られている。

川湯十二薬師