2004年に71歳で亡くなったスーザン・ソンタグ。ソンタグの新刊本の書評が週刊東洋経済に載っていると夫に聞かされ、ソンタグを一度も読んだことのない私はそれを機に図書館で借りられるだけのソンタグの著作を借りてきて、なんの計画もなくとりあえず読み始めたのが『同じ時のなかで』だった。
読み始めると、随分と持って回った言い方で若干読みにくい文体だと思ったが、徐々に慣れてきてソンタグの人物像が見えてきた。自分の信じる原理、原則に常に忠実であろうとする思考、執筆への態度。悲惨な世界の紛争、特にアメリカが関わる戦争の現実から目を背けずに、アメリカ人というアイデンティティを維持したまま首を突っ込んでいく勇敢さ(時にそれが精査を欠き悪影響も及ぼして敵をつくることにもなっているらしいが)。とてつもない文学好きであり、読んていて本当に驚くが異常なまでによく勉強していて、文化から遠い環境のなかで育って読書と出会ってからは貪るように本を読んだというように、二次元から入った人独特とも思えるような文学への愛情と情熱。
彼女の意見全てに賛成ではないし、どちらかというと意見を異にするところが多いとの感想を持ったが、とても一途で愛すべきところのある人だ。そのため、ソンタグが戦争を語る時、同時に多くの死についても語っていて読者の私はその重い現実を一緒に考えさせられることになるのだが、最後の訳者あとがきでソンタグ自身の死について『「骨髄移植を目指しているんだけど、もし適合する骨髄がなければ、長くて一年半の余命ですって」と、訳者の目を正視せずに語った』と読んだ時に、ソンタグが語っていた他の出来事以上に私の心に大きく刺さるものがあった。
自分ではそんなつもりはなかったが、300ページほどソンタグを読んだだけで、これほどソンタグを近く感じる様になったことに驚く。私にとって、それがソンタグの魅力なのかもしれない。