第一章『ダダからシュルレアリスムへ』のダダとは、家庭を含む全存在を否定するところから始まっているのだが、特に団塊世代以上の人たちにとって受け入れがたいであろうこの手の思想のせいもあってだろう、ハプスブルグ展ならば長蛇の列の中高年のお客さんが今回はめっきり少なくて、混雑は全くなくじっくり絵を見られた。やはり、理性の統制をなくして美学上、道徳上からも離れたところで追求する表現は中高年層には興味の対象外のようだ。
エルンストの『視覚の内部』、マグリットの『秘密の分身』などが特に私の気に入り、中でもミロの『シエスタ』は良かった。夢の中を表すような青をベースにした一つ一つの筆の流れの中にポツン、ポツンと抽象的な形が入ったこの絵は、本当にシエスタそのもので、ミロはその要素をとてもよく抽出して描いていると思う。どちらかというと安らかなシエスタだと思うが。
その後、すぐ近くの乃木坂沿いを歩いて妙に黒ずんで古びた煉瓦の塀が気になったと思ったら、旧陸軍大将の乃木邸であることがわかった。そこは現在乃木公園になっていて自由に出入りできる。厩屋なども昔のまま残っていてその生活ぶりを垣間見ることができ、ここでも嬉しいことに猫発見だ。旧乃木邸の庭に猫とは随分絵になるではないか。寄ってよかった。
旧乃木邸
乃木邸庭にいた猫
とてもいい声の猫ちゃんだった