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2011年3月2日水曜日

薬師寺東京別院

奈良薬師寺の中で唯一創建当時のまま残るとされている東塔が、本格的な解体修理をする事に決定した。修繕が始まると八年間はその姿を見られないということで、駆け込み見学で今頃薬師寺はごった返しているかもしれない。東京は五反田にある薬師寺東京別院では、そんな東塔修繕費用を集めようとの試みか、『文化財保護展』なるものが開催中だ。


吉祥天の美しさも素晴らしかったが、聖観音菩薩像は、私にとって特に受け入れやすい仏像だった。先日見た三井家のお雛様たちと比べるのはおかしいことだが、やはり私は仏像の表情や姿が一番好きらしい。
ところが、千手観音菩薩像の手にはなにもないけれども、十一面観音の手には数珠やら家やら仏像やらなにやらかにやらいっぱい持っていて随分重そうだ。そのためにそう見えてしまうのか、若干表情も疲れ気味である。なのについつい母の仕事の労苦をその手で受け止めて少しでも軽くし、家内安全商売繁盛でありますようにと思い切り手を合わせてきてしまった。

それにしても、どの仏像もパンチパーマにしたり幾つも仏像を乗せてみたりと、いろいろなように頭部を高くしていることが気になった。仏であることの自己主張なのだろうか。それにしても、仏像好きの私はこういう仏像を彫る仏師にいつも関心と感謝の意をもってしまう。

この日の東京別院では20分の法話がけっこうな頻度でされていたようで、主に老齢の男女が坊さんの話に耳を傾けていた。最後に薬師寺東塔に納める写経をすすめているのを見て、ものすごく腕利きの店頭デモンストレーション販売ではないかと思った。坊主は多才なようだ。

25億円の修繕費のうち半分を文科省が負担して、もう半分は薬師寺が集めねばならないらしく、その懐具合は切実なようだ。東塔再建のために坊さんが売ろうとしている写経は二枚セットで、そのうちの一枚は修繕後の東塔に国宝の一環として納められるらしい。死期が迫ってきたと日々感じているじいさんばあさんの何か残したい、役に立ちたいとの気持ちにつけ込んだセールストークにも聞こえるが、坊さんの話はいつもこのような内容なので、ただ単にいつもより語気強く集金に励んでいるだけか。天下の薬師寺とはいえ、それくらい25億円の半分を集めるのは大変なのだろう。

文化財として展示されていた平安や鎌倉期の般若信教は、虫食いの跡があり黄ばんでいて、時代物の味を出していた。こうなっても残ると思えれば、人は東塔に納めてもらおうと懇切丁寧に写経するかも知れない。

二階で展示があり、三階ではおもてなしのお抹茶を◯千家の婦人たちがお出しくださるのだが、あまりの上品ぶりに私は一目見てそそくさと帰ってしまった。あの和服に私のジーンズ姿では、ちょっと・・・。

いい仏像を見られいい日だった。