旭川方面から白金温泉を目指す国道237号線は、右を見ても左を見てもその広い視界に必ず大雪山のどこかが入る上川盆地ならではの雄大な景色だった。そんな雄大さから目線を下ろすと、どこまでもきれいな白銀を残す大雪山の稜線とは対象的に、人里では土が見え、ふきのとうが至る所で密集して生えていた。
先日そのふきのとうを東京に残る夫に送るために取り集めてみたが、想像を超える大変さだったことを思い出した。泥の傾斜を下りるとき、私の鈍らな足は使いものにならずに転んですっかりコートが汚れた。ふきのとうを取るときはものすごく手が汚れ、すぐそばを流れる用水で手を洗うも水の冷たさに慄き、それでもめげずに何度も洗ったが、たくさんの土が手に残ったままだった。東京でこういうことをしないために、爪の中まで土が入って洗っても洗っても取りきれないことになぜか非常に新鮮なショックを受けた。そして随分ヤワだと思った。
そんな先日の経験を思い出しながら、東京でベランダから富士山を望む以上に畑から大雪山へのつながりは美しいと思った。それが、車が白金温泉郷に近づくにつれて大雪山は遠目の山から徐々に大きな山の集団となり、気づいた時にはすっかり間近に十勝岳が迫って白金温泉に到着した。
『夢の旅亭びえい』はオープンして一年というだけあって施設はどこもピカピカできれいだった。女性風呂のことしかわからないが、脱衣場の洗面台などもとても洒落ている。湯舟は大きすぎず小さすぎず、私が行ったときは混んでいるわけではなかったので十分な広さだった。内風呂の一つが源泉かけ流しで露天は加水加温しているとのことで、体のためには源泉かけ流しの方がいいと思うのだが、ついつい露天に引かれてほとんどの時間を露天で費やすことになった。
岩風呂になっている露天は目の前にまだ雪が積もり、白樺がとてもきれいだった。岩風呂の隣にはなんとか二人入れるほどの小さな釜風呂のような風呂があった。そちらからの方がより空の上の方まで眺めることができて、客が少なかったこともあってしばらくそこに入ってゆったり雪景色と青空を眺めながら過ごすことができた。
最後に内湯の源泉かけ流しの湯に入ったが、確かに露天の加水加温している湯とは違い、身体が一層温まり軽くなったように思えた。泉質はph6,41の中性で、無色透明の源泉が湯口から注がれていた。湯舟ではオレンジのような茶色のような小さな湯の花が舞って、湯の花の濁りが温泉への興味をかき立てた。これは雪景色を眺めているときとは一味違う至福の時だった。ロビーには熊の木彫りがかけてあり大雪山の麓の温泉らしい空間が設けられていた。
とてもいい立ち寄り湯だった。
237号線の風景
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237号線から白金温泉郷方面に抜けたところの景色