一週間ぶりに東京に戻ると、淡いピンク色の桜が満開に咲いているのがとてもきれいに見えた。だから余震に怯えながらも東京に戻ってきて良かったと思えた。大地震後の東京ではずっと娯楽のない生活を続けてきたので、この華やかさがより心にしみたのかも知れない。いつもなら嫌いな高層ビルも、なぜか今度ばかりはホットする材料になった。そのため空港から自宅に向かうバスの中ですっかり安心して居眠りしてしまった。
自宅近くに咲く数本の桜もとてもきれいで、地面に落ちた花びらもまた格別だった。普通に咲く桜を通りがかりに見るだけで花見の娯楽感が湧くのかもしれない。娯楽の少ない昔の人が花見をこよなく楽しんだというのがわかる気がした。
いつの間にか木々の葉ものび始め、昼間だと若干の影をつくるようになった。これがあとひと月もするとすっかり日陰をつくるようになるのかと思うと、胸が躍る思いだった。
家に戻ると一週間ぶりに再会した我が家の猫はむくれてふてくされていた。ご機嫌とりに相当時間がかかるが、自分が家を留守にしたことが罪深く思え、懺悔のご機嫌取りが始まることとなった。それにしても、3月11日の大地震の際はこの猫は机の下に隠れたりと怯えていたのに、震度6くらいの余震になるとまったく気にせず寝続けているのが不思議でならない。揺れに慣れてしまったのか、震度6くらいだと単に平気なのだろうか。猫の度胸にちょっと敬意をもった瞬間だった。