1900年前から武蔵国の神社を統括する拠点だったという大國魂神社。府中駅からけやき並木を歩き、久しぶりにこの神社に行ってみた。
そこにはずっと以前から生えるケヤキの年季の入った空間のなかに、建築途中の随神門が浮き上がるように存在していた。ヤスリでツルツルに磨かれた白っぽい門の柱はどこから見ても角がなく、職人の意気込みを感じさせる出来だった。
ちょっと前まではただの木だったのが、大國魂神社の境内で随神門を支える一部になったことが随分誇らしいような表情を見せていることに、環境が木をつくるのか、それとも私が境内の空気に飲まれてそう感じるだけなのかとしばし考えてしまった。
今はサツキの季節であるが、随神門の向かって左前に咲くサツキは門のピカピカの白茶色の手前でうっすら気をひくアクセントとなり、絵画のような美しさをつくり出していた。私は丸っこく、あるいは四角く剪定されたサツキを見ることが多いけれども、ここのサツキは野性的で、随神門と対話しているような自己主張をするのだった。
足元の深い小石の道を、ジャリジャリ音を鳴らしながら歩いていると、この二者の対話の中へと自然に引き込まれていく4月下旬の大國魂神社だった。