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2011年4月10日日曜日

富沢散策・旭川

神居神社の境内は二月に訪れたときより雪が減ったものの、鳥居をくぐってからまだ残る雪道には滑らないようにとちゃんと砂が撒かれていた。しかし参拝者は私以外誰もおらず、鳥の鳴き声が聞こえるだけでひっそりと静かだった。

参拝を終えると、高台にある神社から旭川の町の眺めを楽しんだ。赤や青や茶色のトタン屋根の住宅の向こうに旭川駅があり、ビルの並びが見え、その向こうは見分けがつかないが、同じような町並みが続いていた。盆地というには随分広く見えた。
神居神社から望む旭川市内

神居神社からおもむろに富沢(旭川市神居町)方面へと歩いてみた。坂道を上り次に下ると富沢の集落が見えてくる。富沢は農業が盛んで田畑が多いところである。美瑛の丘ほど広くはないが、富沢の丘の流れは美瑛に負けず劣らずきれいなものだった。
富沢

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途中、晩御飯用にどこかでふきのとうをとるつもりでいた私は、ふきのとう密集地帯はないかと探しながら歩いた。すると、火山灰の山の近くに見事にふきのとうが生えていた。そこは道路から離れているために砂埃もかからずふきのとうはきれいだろうと思った。そして歩道から道なき道へと入っていった。

すると、つい最近まで雪の重みで植物が倒れて重なり合っていたらしい場所であることに気づいた。台風の後のようなその光景は、雪が解けて太陽光にさらされ植物の幹が乾燥したために、上を歩くとバリバリという音を鳴らして威嚇されているようだった。その威嚇にすっかり腰が引け、どこかに隠れた穴でもあったらどうしようとの恐怖心が湧いてきた。しかし、やや向こうに無数に生えるふきのとうがあるのを見て、進むことを選んだ。この時、山菜取りをしてどんどん茂みの奥深く入っていって熊に襲われる人の気持ちがわかった気がした。

しかし、穴はなくたっぷり収穫することができ大満足だった。前回はふきのとう取りに慣れない私は随分手を汚したものだが、二度目となる今回はそれほど手を汚さず取るコツを覚え、比較的楽に取ることができた。

そんな私の耳に、水のチョロチョロした流れが聞こえてきた。音の方を見ると、雪解け水だと思うのだがごく浅い流れが数メートルの幅で下方へと向かっていた。そしてそこにもふきのとうが沢山生えていた。しかも水が流れているところのふきのとうだけあって、どう見ても私が先ほど取っていたものよりみずみずしくて美味しそうなのだ。

先ほどの心理通りにそちらへ進むと、案の定、水をたっぷり含んだ土の上でコケそうになったものの、二つほどそのエリアでふきのとうを取ることに成功した。そしてこれ以上この作業を続けると靴が泥だらけで水浸しになると思い、それ以上欲張るのをやめた。

富沢の方に歩いていると、日向は雪が解け日陰は雪がまだ残っていた。そして道路脇では用水に雪解け水が流れ落ちてくるので手を洗うのにちょうどよかった。その水は当然冷たいのだけれどもとてもきれいで、都内で水道水に神経質になっていた一週間前を思い出すと、何かの気力が失せた気がした。

その後も富沢集落を歩いていると、『カムイの杜公園』という道路標識を見て興味が湧いたので数百メートル歩いて行ってみることにした。

隣を伊野川が流れる『カムイの杜公園』は、建設省のテコ入れでつくられたというとても充実した公園施設で、テニスコートやキャンプ場、大規模遊具や芝生広場があり、親子連れの人々などはとても楽しめる公園になっていた。実際、駐車場にはいっぱいに車が停まり、遊具施設ではたくさんの子供たちがギャーギャー楽しそうに遊んでいた。そしてそれは屋外施設だけにとどまらなかった。お手洗いを探しに『わくわくエッグ』という建物に入ると、屋外にいた以上の数の子供たちがキャッキャキャッキャ遊んでいたのだ。その数に驚き、私はとっとと出て行ってしまったが、やはり親子連れは多く利用しているようだった。

山菜を取りながら田畑の中をこうして散歩できる疎開生活が、とても贅沢に思える時間だった。