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2011年4月29日金曜日

穴太寺

京都は亀岡市の田園地帯のなかにポツンと穴太寺はある。私は一キロくらい離れたところから南下しながら穴太寺を目指して歩き始め、澄んだ水の流れる犬飼川を水音を聞きながら橋を渡り、そこからほどなくしてあるこのお寺を訪れた。今の季節は田畑のなかや川沿いに菜の花が咲き、東京では見たことのない鳥を見かけたり、あぜ道では猫を見つけたりと、楽しい一キロの散歩だった。
ものすごく小さくだが真ん中に茶色の猫ちゃんが写っている

亀岡市を囲む山々と菜の花畑

犬飼川

穴太寺は、とても風情のあるお寺で、境内には亀岡とは思えない数の参拝客が入れ替わり立ちかわり訪れていた。

ここの本堂には釈迦如来大涅槃像が安置されて、これはとてもご利益があるとの実感がしみじみと湧く仏像だった。釈迦が涅槃に入った姿で眠っている木像で、この横たわった木像には布団がかけられているのだが、お寺の方の説明だと、自分の身体の悪いところ、そして大切な人の身体の悪いところがあれば、寝そべった釈迦の同じ箇所をなでると良くなりますのでそうしてくださいとのことだった。
本堂

実際に本堂に入って、一番奥にある悟りの境地に至った釈迦の寝姿をみると、うん、これは悪いところを撫でればきっとご利益があるとの確証を得たと思えるほどの見事な仏像で、仏師の腕前に感動し、とてもとても感謝した。そして身体の悪いところをいろいろ撫でていると、ほぼ全身になってしまい、さらに大切な人の悪いところもとなると、完全に全身になり、ありがたやありがたやと思いながら布団をかけなおすのだった。

穴太寺には多宝塔を借景にした庭園もある。周囲が田園でのどかなので、ちまっとまとまった庭園を見ると京都市内の有名なお寺を思い出すが、意匠を凝らしに凝らしたそれらのお寺とはまた違い、シンプルで緑の多い庭園だった。
多宝塔

多宝塔を借景にした庭園

多宝塔があるのと反対側の庭園

書院から庭園を眺めていると、シロサギが池に降りたち、それに池のコイが驚いたのか、急にピチャンと水音を立てて急旋回して泳ぎの向きを変えた。シロサギを庭園で見たのは、いろいろな庭園をまわった中でもこれまでに栗林公園だけだったので、亀岡は栗林公園に負けない自然を有しているのだとつくづく実感した。やはりだてに田畑の中のお寺ではないのである。

庭園を鑑賞した後、襖絵をじっくり見始めたのだが、そのなかにとても面白いものを発見した。いつの時代の穴太寺かは定かでないが、お寺の全体風景が描かれている襖絵の中に、異様にムキムキマッチョなからだつきの風神雷神が描かれていたのだ。穴太寺の本物の仁王門の風神雷神は至って普通に思われるのだが、なぜこれほどカリカチュアして描かれたのか不思議である。そして面白かった。
日本ががいっぱい

書院

マッチョな風神雷神

境内の藤棚

こちらも境内に咲いていた花

藤棚にはまだ僅かだけれども薄紫色の花が咲き始め、ほのかな香りをかもし出していた。それはとても気持ちの落ち着く香りだった。

もう少し季節が早ければ庭園ではサツキが咲いていただろう。四季折々を楽しめそうな、穴太寺だった。

因みに穴太寺から数百メートル離れたところには金剛寺というお寺がある。ここは円山応挙という円山派の祖である絵師が入門したお寺で名高い。
金剛寺


またまた茶色の猫ちゃん発見