『ロトチェンコ+ステパーノワ ロシア構成主義のまなざし』という展覧会が
東京都庭園美術館にて開催されてます。
ロシアアヴァンギャルドの担い手だったロトチェンコとステパーノワの二人。
彼らは芸術を特権階級から解放して誰でも経験できるもの、
社会の役に立つものにしようと頑張りました。
そして制作したのが、絵画のみならず、
ポスターや舞台美術、写真、布地デザインなどでした。
本人たちが被写体になっている写真作品もありましたが、
険しい顔のロトチェンコに比べ、
やたらと楽天的でニコニコしているステパーノワ。
この対照的な二人は仕事上でも私生活上でも
最良のパートナーだったとのこと。
何の前知識もなく見に行ったのですが、
どの展示コーナーもとても面白く、
二人が社会で自分たちの仕事を生かそうとの
夢や希望を強く持って意欲的に取り組んだ作品であることが
伝わってきます。
個人的には最初の方に出てくるステパーノワの人物画が、
生き生きと力強く人間が描かれていて好きです。
生命が本当に宿っているようでした。
「チェスを指す人たち」という絵に描かれている人物などは、
サッカーをしてるかと思うほどの躍動感と勢いを感じます。
布地デザインも円や線を巧みにつかって可愛らしいです。
ロトチェンコの広告ポスターは、
ロシア革命後の当時のロシア社会をよく反映していて、
興味深く面白かったです。
「当社の株主でなければソ連国民とはいえません。」との
ロシア航空産業開発会社のポスターや、
「注目! 労働階級のための食用油。」というポスターなど。
一番面白いと思ったのが、
「このデパートは心と体、知性に必要な物すべてを人々に提供します。」
という国営デパートのポスターです。
(文はウラジミール・マヤコフスキー)
積極的に社会と関わり、日常生活に作品を持ち込もうとした
「構成主義」なだけあって、
展示を本当に身近に感じながら楽しむことができました。
庭園美術館は旧朝香宮邸なので、
展示室が多くの美術館と異なり、とても立派です。
高そうなカーテンがかかっていたり、扉が妙に凝っていたり、
魚の柵のようなものがあったり、天井が妙に丸くなっていたり、
大きな棚があったりです。
向こうが透けて見えるのかと思ったら鏡だったりと、
企画展示以外にも楽しみがあるのが特徴です。
展示の途中、ウッドデッキに出ることができ、
外の空気と花の香りを吸って庭園を楽しむことできる庭園美術館でした。