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2011年11月19日土曜日

こんな喫茶店がまだあるなんて

JR吉祥寺駅を北口に出て通りを東側に歩くこと数ブロック。雑居ビルが建ち並ぶなかを少し入っていったところの二階にポツンと『バロック』という音楽鑑賞専門店なる喫茶店がある。

私が行ったのは平日の昼間だったのだが、近くの居酒屋はまだ開店前。駅前の人通りに比べると、ちょっと離れただけなのにこのあたりはとても静かで、この近くで今大音響の音楽が流れているとは想像できなかった。

ところが、バロックの看板を見つけてビルの二階へ上がり扉を開けると、最初は小さな音が聞こえてきたのが、廊下を歩き進めるとどんどんその音が大きくなり、確かにこれは鑑賞用喫茶店であることがよくわかった。

部屋の奥の方のテーブルには灰皿がなかったので禁煙席はそちらだろうと思い、椅子に座ると、程なくしてとてもきれいで上品なマダムが接客してくださった。すばらしい笑顔だったのが印象的だ。

リクエストの曲はありますか?と聞かれたので、ベートーベンの交響曲5番を、と言うと、レコードリストを持ってきてくださり、そのなかからどのレコードがいいかとさらに聞かれた。そこで、よくわからないがコロンビア交響楽団、ワルター指揮の一枚を頼んだ。

私が入店したしたときは客は他におじさま二人がいて、モーツアルトのピアノ曲が流れていた。それが終わると私のリクエスト曲が始まり、自分のリクエストした曲を聴けるなんてなかなか気分がいいではないかと、近くに置かれている石の彫刻を眺めながら、生花の束を眺めながら聴き入った。

レコードらしいノイズが、とても懐かしかった。

珈琲は一杯800円と安くはないが、あの真心こもったマダムの接客に、自分が聞きたい曲をリクエストできるなら決して高くはない。

そう思わせてくれる喫茶店だった。