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2010年12月13日月曜日

秋の雨

明日は雨だとの予報は当たった。窓越しに伝ってくる冷気は外の雨音の冷たさを想像させるに十分だ。あまりの寒さに予定していた外出を取りやめたけれども、朝起きて窓を開けた時の肌を包む冷気の爽快さが忘れられず、ついさっき外出を取りやめた理由も忘れて、朝の心地良い感覚を今ももたらしてくれることを当たり前のように期待して外へと出てみる。

玄関の扉を開けて一瞬の間を置くと、感動を呼び戻す朝と同じ空気が期待通りに顔を包み込むことに喜ぶ自分がいる。雨がナイロンコートに着地してたてるパチ、パチパチと跳ね返るような音は、頭上にあるであろう本で読んだことのあるもくもくの雲を想像させる。それがしばらく続くと車が水たまりをかき分けていくザーっという水しぶきが聞こえる。このボリュームからして相当深い水溜りだ。随分と長くこの雨は降り続いているらしい。多くの人が不快で何かと不便を感じるこの雨が、私は実は大好きだ。

大空のもとに身を置くと、まず顔に当たる雨が冷たくて、数分もするとコートの外側から皮膚に感じられるところまで雨粒が入ってくる。さらに数分もすると、身体はどんどん冷えてきて脳のどこかが屋内へと私を誘導しようとする。なのにそれとは裏腹に、もっと長時間冷たい雨を満喫しようとするほうに思考の筋が流れていくことに、一体自分は何を求めているのか不思議になった。

それは結局そこに山があるから登る登山家と同じようなものなのかも知れない。あるいは親しい友人が久しぶりに家を訪ねてくるのを待ちわびて、その姿が窓越しに見えた途端に外まで駆け足で迎えるように、久しぶりの雨が友人のように嬉しくて、健康を害すか否かの境目まで一緒に楽しもうとの欲求なのかも知れない。

(I)