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2011年1月1日土曜日

草津の冬の風景

草津の夜は静かだ。そして一気に冷え込む。冷え込んだ空気は朝になるとより冷たさを増し、夜明けと共に徐々に暖かくなってきたかと思うと、屋根の雪を長い氷柱に変える。ポタポタと氷柱を伝って落ちる水は、なぜこのまま放っておくのかと不思議だったが、一日二日と草津にいると、長くなった氷柱を落としても落としてもキリがないことに気づく。だからきっとどの家も放っておくのだろう。どおりで至る所に雪と氷柱に注意との看板がある。


宿の女将はきれいな人だった。翌日掃除に来たおばちゃんたちとは姿勢から表情から全く違う。顔からは誇りと意気込みが感じられ、お金を払ってしまえばいたって優しく親切だ。昔は芸者さんだったのかと思わせるほどに芸達者であることを物語るヨガや日舞の賞状の数々が玄関の壁に並んでいる。そういえば草津の商店街の奥まったところに凪の湯というその昔花柳界の女性が通ったという共同浴場があった。女将さんは今は客が入浴しない時間を見計らって宿のお湯に入っているようだ。

本当に静かな草津の夜は、メインの観光地である湯畑に行っても、ほんの時折若い観光客の高笑いが響くだけで実にひっそりしている。寒さのせいもあるかもしれないが、ほとんどの店が閉まっているのをみると、こういうリズムの街なのだと思う。

年末も年始も、雪の降る日も晴れの日も、変わらず温泉が湧きだし、それが続く限りは観光地として生き絶えることの恐らくない草津の街。若い世代が非常に多く訪れるのを見て、今後もそうそう廃れることはないだろうとの思いをより強くもてる温泉郷だ。東京という大都会も白根山や温泉などの大自然もほどよく近くにある草津は、生き残るには充分な条件をそろえている。

都会暮らしに慣れてしまった私はこの中途半端に便利な温泉郷に二日もいるとかえって落ち着かないのだが、それもまた利便性の高い観光地ならではの味わいなのかもしれない。

朝から雪がずっと降っているというのに、一日外をブラついても帽子だけかぶれば傘をささなくても濡れることがない。それほど外気は冷たいというのに、冷えてもすぐに外湯に入れるから大丈夫という安心感がとてもありがたく思える草津だった。