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2011年8月30日火曜日

利尻より②

午前中のバスツアーが終わる頃、ようやく雨はやんだ。私はこれなら午後は自転車に乗れると思い、さっそくホテルに行って自転車を借りた。

フロントの方が午後だけでも十分まわれるコースをとても親切に教えてくだったのでその通りにまわることにした。そしてもらった地図をもって最初に向かったのは、ちょうどコースの途中にありバスツアーでガイドさんが教えてくれた、鮭の遡上の見られる海岸だった。そこへはフェリーターミナルから姫沼方面に向かう自動車道を4キロほど進むことになる。

ここは川の水が海に流れ出るところで、ガイドさん曰く、雨が降ると鮭はさあ遡上しようと張り切るらしい。バスの中からはちらっとしか見えなかったので、肉眼で見ようと自転車を止め橋の上からのぞいてみると、数限りない鮭たちがみな同じ方向に一直線に向かって泳いでいた。背中を赤く染めて必死である。この様子を見てその後ホテルに戻って思い返したとき、私は都心の会社員らが一心不乱に一糸乱れぬ姿で通勤する光景が目に浮かんだ。両者の周辺の景色はだいぶ違うが、どちらも必死なのは同じだろう。
鮭の遡上
ちょっと見辛いか




その後この一般道を野塚展望台まで行き、そこから山側に入ると自転車専用道路につながる。

ここからのサイクリングロードは利尻富士を上るように道をたどることになる。時にその坂は息を切るほど急になり、切り替えのある自転車でよかったと思った。そして20分ほど上り坂を走ったところでこのサイクリングロードの頂上である地点に着く。これ以上登りが続くのはキツイと思っていたのでホッとすると、未だ姿を現すことのない利尻富士を右側に、自転車は下り坂を走ることになる。そして数キロ走ると高山植物展示園や利尻富士温泉などの施設のある一帯に出る。ここには甘露泉水という湧水が流れていて飲むことができるのだが、名前の通りに飲んでしばらくすると水の甘さが口のなかに広がる。この水はうまいぞと私はペットボトルをからにして甘露泉水を補充して次なる目的地へと向かった。

曇っているが、本当は向こうに利尻山がある


こんなサイクリングロードを走る



甘露泉水

それは夕陽丘展望台で、鴛泊フェリーターミナルに近づいてきたところにある。しかしこのあたりから小雨が降ってきた。困ったものだと思いながらも私は夕陽丘展望台に上ると、この疲労を少なからず億劫に思っていたのもつかの間、その道のりにたくさん花が咲いることにすっかり喜んでしまった。細い道は転べばそのまま下に転がり落ちそうなほどに急な斜面が迫っているが、その反対側には花道のようにいくつかの種類の花が咲き続けていた。これほど楽しい展望台への道のりは初めてである。


夕陽丘展望台までに咲く花






展望台からの利尻山

鴛泊港の方

港と反対側

山の麓の光景

展望台から海の向こう

私はその後フェリーターミナルのすぐそばにあるペシ岬にも行きたかったが、雨が強くなったために断念した。このペシ岬はゴリラの顔に似ているといわれる岬である。



確かにゴリラっぽい

私はこの岬を断念して強まる雨から逃れようと自転車をホテルに急がせたが、ホテルにつくまでの2キロほどの間に十分濡れていた。8月下旬でこの冷たさの雨かと、冷蔵庫で冷やしたような雨に北国の島であることを実感しながらチェックインを済ませ、そのままお風呂につかった。

部屋で一休みした後雨がやんだので、夕日でも見ようとペシ岬に出かけた。思いのほか急な上り坂でやや苦労したが、強風吹き荒れる頂はとても気持ちよかった。その後暗くなる前に下りなければと、頂で日の沈むのを見ることはできなかったが、港付近からの眺めでも十分美しかった。

利尻では多くの猫とも出会えた。やはり港に猫はつきもののようである。





利尻より①

5時に起きて朝食を食べたときは雨は降ってなかったのに、6時半にフェリーターミナルに向かおうとホテルを出ると細い筋のような雨がさんさんと降っていた。その後に利尻観光を控える私はこの雨に驚愕したが、結局利尻のサイクリングロードを走る予定を断念して観光バスに乗ることにした。

利尻行きフェリーには団体ツアーが何組か乗り込み、船内はたいそうな賑わいで、私はフェリーの最後尾にある吹きさらしのデッキの椅子に座った。夜から朝にかけての外気の冷たさにより冷やされた椅子が暖まってきた頃ようやく船は出航するのだけれども、ノシャップ岬を過ぎて周囲になにも見えなくなり、ほどよく波に揺られはじめると、私はウトウトして寝てしまった。

恐らく30分くらい寝た後目覚めると、雨が強くなったきたなあと海を打つ雨の強さを見て思い、見えなくなった北海道本島を向こうに後ろを振り返れば、いつの間にか利尻島がそこにあった。
こうしてフェリーに乗り込む

稚内湾にある防波堤

フェリーから望む稚内公園

右端はノシャップ岬

フェリーは利尻に近づいた
利尻富士の下の方だけ見える

だいぶ利尻に近づいた

雲がかかり利尻山は下の方しか見えなかった。船を下りてホテルの送迎の人と相談すると、雨はいずれ止むだろうが観光バスの方がいいとのアドバイスを受け、私は荷物だけ預けてそのまま観光バスに乗ることにした。利尻も礼文も船の到着に合わせて観光バスを出発させているという気のききようがありがたい。

雨の中、45座席ほどのバスには乗客22名が乗った。最初に寄った姫沼は晴れていれば逆さの利尻富士が映るはずが、今日は雲がかかってはっきり映らず、ガイドさんが映ってますよ映ってますよと励ましてくれても私にはまったく見えなかった。しかし、姫沼の周囲を一周できる遊歩道は開拓の大変さを教えてくれる自然のなかで、こんなにササや木が生えるのを開拓するのかと思うと気が遠くなった。
姫沼

遊歩道





ここからオタトマリ沼








蝶が


次に寄ったオタトマリ沼もとても美しい沼で、ここからの利尻山もやはり上の方は雲がかかって全貌は見られなかった。しかし、雨で足下がぬかるんでいるのでここは遊歩道はやめましょうとガイドさんが言っていた散歩道を少し入ってみると、見たことのない蝶が舞い、こんなエゾマツに囲まれたなかで小さな花花が密かに可憐に咲いていることに妙に感動した。晴れた日に訪れることができれば、是非とも一周したい。

その後行った仙法志御先公園ではアザラシが飼育されていて、愛くるしい顔と水の中では自由自在のしなやかな動きを見せてくれた。このあたりは利尻山の噴火で流れ出た火山がかたまったものがそのまま岩になり、険しい姿を見せているが、そのなかでこのアザラシの愛くるしさは、利尻島の人のユーモアだろうか。
仙法志御先公園の険しい岩

アザラシたち





その後利尻町立博物館で利尻の歴史に触れツアーは終わった。そして最後は鹿児島の桜島ツアーでも宮崎の青島ツアーでもあったように、ここでもガイドさんは地元の歌を披露してくれた。そしてどのガイドさんもなぜか歌がうまいのと同じく、このガイドさんもうまかった。

バスが三時間半ほどかけて利尻島を一周するも、一度も晴れ渡ったことはなく、利尻富士を頂上まで見ることはできなかったが、それでも満足のいく利尻一周のツアーだった。