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2010年6月7日月曜日

アドリアーナ・ルクヴルール(オペラ)

BS2のプレミアムシアターにて放送されていた『アドリアーナ・ルクブルール』を見ました。
2009年のトリノ・レージョ劇場での公演です。
このオペラを見るのは初めてで、チレーアが作曲したことも、
ストーリーも知らなかったのですが、見て良かったです。

舞台は18世紀前半のパリ。
アドリアーナはコメディ・フランセーズの花形女優で、
ザクセン伯のマウリツィオと恋愛中。
しかし、ブイヨン公妃がマウリツィオに恋心を抱いているので困ったものです。

全4幕中、前半はほとんど嫉妬劇です。
上流階級はさぞかし暇なのだろうと想像せずにはいられません。

オペラで独特なのが、
ひとつの舞台で違う歌を複数の歌手が歌い始めることですが、
この嫉妬劇の最中、アドリアーナとブイヨン公妃は
己の心の内をそれぞれに同時に歌い始めます。
この場面は面白いです。ああ、オペラだなあと思います。
でも、指揮者はさぞかし大変だろうと思います。

また、ミショネというアドリアーナが属しているコメディ・フランセーズの
初老の舞台監督がいるのですが、彼はアドリアーナを密かに好きなのです。
蜘蛛の巣のような人間関係です。

全幕通してこのミショネの恋は他の恋の引き立て役に見えてしまいます。
でも老人ミショネは分別があって、アドリアーナとマウリツィオを応援します。

第三幕ではバレエが出てくるのですが、これもオペラらしいです。

第三幕までは、ただの三角関係、
あるいは四角関係ではないかと思っていたのですが、
第四幕でそんな思いは見事に覆されました。

病で床に着くアドリアーナはすっかり元気がありません。
そこに、コメディフランセーズの仲間が見舞いに来てくれます。
アドリアーナは大分気が晴れ、元気になります。
でも何かが足りない、そう、長らく音信不通のマウリツィオが足りないのです。

そんなところに、以前マウリツィオに贈ったスミレの花が、
アドリアーナの元に送られてきます。
アドリアーナは、もう愛されてないどころか、侮辱されたとショックを受けます。

スミレの花言葉は「誠実」なのですが、
なんだかこのシチュエーションにぴったりです。

ところが、ショックで憤ってるところに、マウリツィオやって来るではありませんか。
嬉しい、でもあのスミレは何なのだ・・・マウリツィオは送ってないと言う・・・。
そう、恋敵のブイヨン公妃のしわざだったのです。
ブイヨンは、何はともあれ公妃です。
プライドが高いのは当たり前。我がままなのも当たり前。
手段を選ばないのも当たり前・・・なのかも知れません。

スミレには毒がつけられていて、
アドリアーナはその毒で死んでしまうのでした。
自分のプライドを傷つけるヤツは殺す、恐ろしい公妃。
でもこのオペラは、実在の女優、
アドリエンヌ・ルクヴルールの生涯を元につくられてるのでした。

アドリアーナ役はミカエラ・カロージが、
マウリツィオ役はマルセロ・アルバレスが演じてました。
熱演、良かったです。