私は連日の京都観光で足が疲れていたので、この日はあまり歩かないでおこうと思い、JR嵯峨嵐山駅から渡月橋を渡り、晴天の下、桂川沿いに木陰を見つけてただただ寝転んで川のせせらぎを聞いていた。
私が川音に耳を傾けている間に、川の中ではシロサギやそれよりもう少し小柄な白い鳥たちが、長いくちばしを起用に使って魚などを食べているらしかった。それは鳥たち自身のためであり、同時に川沿いにいる観光客の目を喜ばせるのがあまりに自然で、私にはなにかでき過ぎたシステムに思えた。
私のすぐそばでは、風が吹くと、木陰がそのかたちを変えて寝転ぶ私に光の刺激をもたらしてくれた。それは思いもよらぬ細いまぶしさで、一瞬一瞬姿を変えるのだった。
こうしてひと時をすごした後に、私は阪急嵐山線の嵐山駅に向かい、一駅先の松尾駅にある松尾大社へと足を伸ばした。
松尾駅を出ると、目の前には早速松尾大社の大鳥居が現れる。醸造の神さまが祀られているこの神社は、今の季節はヤマブキが咲き誇る。
庭園も見事らしいが、私が境内に入ったときは17時を過ぎていたのですでに受付が終了して、観賞することはできなかった。因みにこちらも入れなかったがお酒の資料館もある。
本殿の向こうを流れる御手洗川の先には「亀ノ井」という酒造りの名水かつ延命長寿の霊水とされる水が流れるところがある。このあたりに来ると、すぐ前に山が聳え一気に肌寒くなり、さらに少し奥を流れ落ちる「霊亀の滝」は、霊験あらたかだった。
長寿の象徴として至る所に亀の像があり、拝殿には酒樽が並ぶ松尾大社は、私としてはとても居心地の良いところだった。
ヤマブキが咲き誇る境内
本殿
酒樽が並ぶ拝殿
亀ノ井からちょっとだけ見えた「曲水の庭」
霊亀の滝