バージニア・ウルフの『灯台へ』をようやく読み終わった。
ラムジー夫人が突如死んで、夫人の娘の一人も死んで、物語の後半は残った人々が死を抱えながらの展開である。そしてその心理描写もうまいウルフだった。
読書を終えて、近所の飼い猫たちが散歩に出歩くなか、一息つくために私は公園に行ってみた。
ベンチに座ろうと思って近づくと、何かが僅かに動いているのを感じた。よくよく見てみると、薄い緑色をした、蟻より小さな虫が2メートル程の横長の木のベンチに無数にうごめいているのだった。
しばらくその虫たちを観察してみたが、それぞれが違う方向に歩いて行き、活動の目的は私には分からなかった。薄緑色の小さな虫たちは、自分たちの10倍くらいの虫がいると、その背中をよじ登って越えていくのだった。我家の猫が私のお腹の上を歩いて越えていくようなその様子は、互いに警戒心がなく、親しげであり、事務的であり、挨拶のようでもあった。
ところが自分と同じ種類の虫とバッタリ出くわすと、正面衝突するかしないかのところで互いに方向転換し、相手を踏んづけて越えていこうとはしないのだった。微妙な仲間意識のあらわれなのだろうか。
ベンチの横にも後ろにもこのような光景が広がっていて、私は結局座ることはできなかったが、束の間の忙しない営みを垣間見られたことがとても新鮮だった。