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2011年5月15日日曜日

独り言

地方に行くと、自転車通学の生徒がヘルメットをかぶっていて、地方に来たなあとつくづく思うことがあるが、都内の某土手では、おじさんたちが真っ黒に日焼けして、ヘルメットをかぶって競技用の自転車をこぐ姿が多数見られ、どこかで大会でもあり、おじさんたちは定年後もなお意欲的なのだなあとつくづく思った。

川の水は随分と冷たさがなくなり、手だけではなく足も入れてみようと思えるほどだった。しかしそこまでの暑さではないのでやめようと思いとどまっていると、近くまで親子連れがやってきた。まだ若いお母さんと4~5歳の男の子である。

お母さんがおもむろに腰をおろす傍らで男の子は水の流れに興味津々のようだった。そしてまだまだ柔軟性のある身軽なその体を自由自在に動かしてはあっちの流れを覗き、こっちの流れを覗くと、いつの間にかどこかからもぎ取ってきた草を流れの中に放り投げて不思議そうに眺めるのだった。

その不思議さが彼を次の行動へと駆り立てるのか、今度は細い木の枝をもってきて流れの中に入れ始めた。そしてそれが終わると、根っこのついた葉をもってきて、今度は大胆に川の中へと放り投げた。そしてなぜかガッツポーズをした。何に対しての勝利感なのか、私にはわからなかったが、男の子はその後もピョンピョンはね跳びながら喜びを誇張して全身であらわしていた。やった、やったと独り言を言いながら。

しかしそれは独り言ではなかった。数メートル離れたところにいるお母さんが見ていていることを、この子は十分承知の上でやっていた。そしてこの子には、まだお母さん以外の人の視線は気にならないらしかった。

すぐ後に、お母さんが帰る時間だと男の子に告げると、男の子はよりパフォーマンスを大きくしてお母さんの目を引こうと頑張った。右に走って行ったり左に走って行ったり。それは、そばでバーベキューをしている学生たちの目に止まり、学生たちも一緒になってはしゃぎ始めた。

お母さんは笑いながら、走りまわるわが子がようやく戻ってくることに喜びを感じているようだった。

犬の散歩と自転車乗りのおじさんが目立つ土手でのひとコマである。