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2011年5月27日金曜日

バラとハト

去年、神代植物公園のバラ園に来たときも雨で肌寒かったが、今年も小雨がパラつき寒かった。

湿度が高いとバラは強く香るとニュースで聞いたが、去年も雨だったので、バラ園一帯を覆うこの香りは、雨がもたらす湿度のために強いのかは去年と比べてもよくわからない。しかし、その香りは入園直後により強く実感し、次から次へとバラを見て歩くと共に、香りを放つバラのそばでしか香りを実感しなくなる。

品種が豊富であまりに色彩豊かな園全体を見渡そうと、小高いところにあるテラスに移動してみた。すると、はじめは圧巻のバラ園の方方を見渡すも、やがて足下をウロウロする二羽のハトに目が行き、二羽のハトは、何かの拍子に同時に羽ばたいたかと思うと、再び着地して互いにつかず離れずの距離をウロウロしているのだった。そしてその歩みを何の気なく追ってみると、ここのテラスで人間が食べながら落としたと思われるお菓子のクズやパンのクズをついばみ始めるのだった。おかげでその辺りの床はみるみるきれいになり、少なくとも大きめの食べ残しは一掃された。

夫は都心のとある横断歩道を渡っているときに、数ある人の頭の中から、恐らくひときわ大きくて安定感があると判断されたのだと思うが、ハトに踏み台に選ばれ大いに憤慨していたことがあった。また別の際には、ハトにフンを落とされ激高していたこともあった。しかし、ここ神代植物公園のバラ園のテラスでは、ハトは人が散らかしたあとの掃除人となっている。

そんなハトの姿を夫にも見せて、幾多の経験でもつに至った彼のハトへの偏見をぬぐい去ってもらいたかったけれども、残念ながら彼は大阪に、80歳になる知識人を生業とするおじいちゃんをビジネス相手に日帰り出張に出かけた。帰ったらこのことを伝えてあげようと思う。

それにしても、福島原発の真相やら嘘やら本当やらが日々ニュースで流れ続けるなかで、バラ園は北海道か関西にでも行ったような別世界である。

夫は大阪という別世界からお土産にきんつばを買って帰ってくるという。そんな夫は福島原発についての処理に不満爆発の毎日だが、80歳のおじいちゃんとの仕事がその不満を少しでも解消することに結びつくことを期待したい。