持病が悪化しつつも、北海道の母が送ってくれた水辺でとれたというフキの皮むきを始めた。
北海道のフキといえば足寄町のラワンブキを思い出す。去年の10月にラワンブキのメッカである足寄町を車で通過したとき、人の背丈ほどもあるラワンブキが水辺に群生しているのを見て、野生のご馳走の威力に目を覚まされた記憶がある。そして、地元の人は一日中フキの皮を剥きを続けるという。
私は、ラワンブキよりもっと小さくて細いフキを30本くらい剥いたところで爪がはがれるかと思うほど手が痛くなり、あと半分くらいの束を残したままダウンした。貧弱なものだとの実感だ。
ところが、フキの皮むきを始める前に一度おざなりに読んだ、荷物に同封されていた母の手書きのメモを読んでみると、一度塩ゆでしてから皮を剥くとある。生のまま皮を剥いたからこんなにひどい目にあったのか、、、。残りの半分は塩ゆでしてからと心に決めた。
山菜はアクが強いものが多いが、フキのアクの強さは皮を剥いていてつくづくわかる。みるみる手にアクがこびりつき、指紋のところが黒くテカテカになる。においも色も、石鹸で洗っても洗ってもとれない。何日後にとれるのか見物である。
フキの皮むきを断念してベランダの外に目をやると、近所の家の玄関や庭にはいつの間にかバラが咲き誇って、時にその香りが風にのって私の鼻元までやってくる。
私がバラに気を取られていると、我が家の猫はなんだなんだといつものように好奇心を奮い立たせて自らベランダに出て、参加型の姿勢を積極的に見せてくる。しかしこの猫も、昔は大好きだった紅鮭に14歳の今は全く興味を示さなくなった。以前はテーブルに鮭がのると、必ずそろりそろりと手を伸ばし、爪を食い込ませては引き釣り寄せて、くわえて持って行っては私に鮭を取り上げられ、私は猫の歯型のついた鮭を食べることが日常茶飯事であったのに、今は全く興味なしである。嗅覚が衰えたためか、毎日のゴハンにも、出したての新鮮なゴハンでないと食いつきが今ひとつである。
それでもフキの皮を剥く私を後ろから見守ってくれる力強い味方なのだった。