神戸駅から神戸港までは目と鼻の先である。そして海を目指す人が多いために、流れ沿っていけば迷うことなく海までたどり着くことができる。
海の反対側にはビルの向こうに緑茂る山並みが続き、神戸が横長の町であることがわかる。海に着いてみると、そこは「ハーバーランド」や「メリケンパーク」などと名づけられたエリアがあり、駅周辺よりさらに人が増え、何するでもなく海を眺めながら歓談する人々の光景が目立った。
しばしば海上保安庁のヘリがすごい音を立てて近くを通っても、遊覧船が出立の鐘をかんかん響き鳴らしても、人々は近くの小学校の下校の鐘を聞くように、気にすることなくマイペースに過ごしている。
海の向こうをずっと見続けている人々に気づくと、その視線が地球を一周して再び見ている地点に戻ってくるのではないかとの印象を受けた。
神戸の主だった町並みを見ておこうとメリケンパークのバス停からループバスに乗ってみた。ゴールデンウィークの中日のこの日は観光客が多く、臨時バスと合わせて二台の緑を基調にしたハイカラなバスがやってきた。そこに50人は並んでいる観光客が分かれて乗り込むのだが、当然ぎゅうぎゅう詰めで、のんびり町並み見物とはいかなかった。
それでも赤と黄色の独特の中国らしさを醸し出す南京町は異国情緒あふれる神戸らしかった。私は北野異人館街でバスを降りてイギリスやフランスなどの各国旧領事館跡を通りから眺めながら三宮駅まで坂を歩いて下った。
水のあるところに人は集まるというが、その通りに海辺に人が集まり、坂を上ったところの異人館街にも多数の観光客が訪れる神戸だった。