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2010年8月27日金曜日

静かな大地 

朝日文庫から出ている池澤夏樹の『静かな大地』を読んでいると、自分の幼少期を思い出しました。静内ではなく旭川のことですが。

小学校にあがる前の年頃に家の前で一人で雪遊びをしていると、通りを馬車が通りました。車が行き交うものだと思っていた道路を馬車が通るのを肉眼で見たのはあれが最初で恐らく日本では最後と思います。

馬はとても大きく見えました。本当に馬がこうして生活のなかにあるということが、当時の私にはとんでもない驚きでした。

当時の道路は今日のように舗装されていなくて、砂利道だったと思うのですが、雪で砂利は見えませんでした。真っ白の世界を茶色の馬が一頭とても静かに大人しく過ぎていく、人生で最も印象に残る光景の一つになってます。

『静かな大地』ではアイヌの人々の暮らし、維新後和人が入植してからの変化が描かれてますが、もとはアイヌが暮らしていたところなのかと思うと、自分が北海道出身であると言うのがおこがましく思えてきます。

この小説は著者自身の先祖の物語だそうですが、この時代の北海道を知るいい機会になりました。同じ北海道出身の身としてありがたく思います。

私が同じく小さい頃、アイヌの人がまだ残っているとのことで、母にアイヌ人のところに連れていかれたことを覚えてます。日本人とはちょっと違う人だと幼心に思いました。そして日本人とは違う暮らし方をしているようだとも思いました。小説のなかには、アイヌ人を差別し滅ぼすことを強さの印だと悦に入って堂々とやる人々がいることが描かれてましたが、そんなことを思える理由が私にはわかりません。あそこにいたアイヌ人がどういう思いで和人が来ることを考えていたのかと思うと、自分がいるべきところではないように思えてきました。

(注:クリックすると音が出ます。)
カラヤン指揮 ドヴォルザーク Symphony No. 9 "The New World