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2010年4月29日木曜日

逝きし世の面影 渡辺京二 平凡社

平凡社ライブラリーの一冊。
近代化以前の日本について書かれた、昔から評価の高い本です。それが、古き良き日本についてノスタルジーに浸れるとのことで、ここ数年、俄に人気があるとか。

私がここで取り上げたいのは、古き良き日本でも何でもありません。猫好きの私がこの本の中でもっとも注目し驚いたことは、482p~483pに描かれている猫とネズミのことです。

とある外国人夫人が長崎で暮らすことになり、なんと、「猫ほどもある鼠が、枕元で踊ったり鳴き声を立てたり」したというのです。猫ほどもある鼠、恐ろしい・・・。
隣にいた人に、猫ほどもある鼠なんてあり得るかと聞いてみると、子猫のことでしょ、大袈裟に言ってるだけだと言うのですが、
他のところで、「子猫は鼠がよほど怖いらしく」と、子猫は別に出てくるのです。
ということは、やはり成猫ほどもある鼠ということ。
で、子猫は鼠が怖くて、「物音がしただけで飛んで逃げる」そうな。
しかも、「日本の猫は大きくてつやつやと肥えていますが、怠惰で鼠をとって食べる気はないのです。ここの鼠は猫と同じくらい大きいものですから、猫のほうが飛びかかっても無駄だと知っているのでしょう。ネズミはおかげでしたい放題、とても横暴です」とあるのです。猫とネズミの下克上です。

かつ、日本の「猫はネズミをとるのはごく下手だが、ごく怠け者のくせに人に甘えるだけは達者である」と。バカにされた発言です。
さらに、日本の可愛らしい猫がネズミを全然捕らえないのは、婦人たちの愛玩物であって、大事にされすぎているからなのだとのこと。大事にされずぎて何が悪い。

このように、猫とネズミの驚くべき生き方が生き生きと描かれているのでした。猫ほどもあるネズミ・・・それはゴキブリより怖い生き物ではないでしょうか。ねずみ算式に増えるんですよ~。猫はこの時代も猫っ可愛がりされていたようです。