昔は一生に一度は行きたいと、みなさん貯蓄をしていたとか。
365段上ったところに大門があり、
ようやく金刀比羅宮の境内に入ります。
大門まではうどん屋さんや土産物屋さんが軒をつらねていますが、
そこを過ぎると灯籠が並ぶ階段をひたすら上り続けます。
そしてだんだんと口数が減り、歩みは遅くなり、
階段が憎たらしくなってきます。
いけないいけない、ここはよりによって金刀比羅宮の境内。
負の感情は御法度御法度と思いながらも、
階段が憎たらしくなってくるんです。
ああ、身軽な小学生のときに来ればよかったと、つくづく思いました。
高橋由一館のあるところには広場があって
ベンチが設けられているので小休止をとらせていただくことに。
ただ、ここですでに、昨日までの
栗林公園と屋島を歩いた身体は体力の限界。
でも他の参拝客のかたがたはそんな昨日が無いせいか、
結構余裕しゃくしゃくでしゃべっておられます。
そして、ここには神馬が二頭いて階段をのぼり疲れた人々に
一時の安らぎを与えてくれます。
白と茶色の馬さん。
白い馬は五歳で、北海道は帯広出身の道産子・月琴号です。
ずっと、下にあるらしい飼い葉を食べ続けて顔を見せてくれないので、
おばちゃんたちが、げっちゃん、げっちゃん、こっち向いてと呼ぶのですが、
神経質で繊細といわれる馬が向く分けないと思っていると、
ほんの少しですが顔を向けてくれたではありませんか。
おばちゃんたち、しつこく呼んでくれてありがとう。
茶色の馬は香川県出身のサラブレッド、トウカイスタント号、18歳。
こちらもずっと食事中で、顔を向けてくれませんでした。
が、向けてくれました。
その表情は、人間でいうと72歳という年齢を感じさせる、
憂愁に満ちたものでした。人生というか、馬生を背負った顔です。
げっちゃんはまだまだ20歳で元気はつらつ。
道産子らしく大きいお尻にふさふさのたてがみで、人気者らしい風貌です。
両馬ともに引き締まった筋肉、無駄肉のない身体。
ああ、私もそんなだったら今こんなに疲れてないのに・・・。
そしてまだ階段のぼるかと思うとぞっとする、
そしてそれを全部降りると思うともっとぞっとするのでした。
旭社です。
本宮目指して再びのぼり始めると、旭社が途中にあります。
さらに上って本宮へ。
本宮です。
ようやく着きました~。それまでの疲れはこの瞬間喜びに変わります。
しかも、瀬戸内海方面の眺めは絶景。
琴平の町の中に讃岐富士が遠くに優しく聳え、
その向こうに瀬戸大橋と瀬戸内海が見えます。
人も気候も温暖ですよ~。
昔の人は一生に一度は金比羅参りに行きたいと
言っていたといいますが、
私の感想からすると、一度参ると石段に懲りて、
もう二度と行きたくないために、
結局金比羅参りは平均して一生に一度になるのではないかと
思うのでした。